「貴様」は元々敬語?意味や使い方の変遷を解説
時代劇や戦争映画でよく耳にする「貴様」という言葉。現代では目上の人に使うことは絶対に避けるべきですが、実は元々は敬語だったということをご存知でしょうか?この記事では、「貴様」の歴史、意味の変遷、使い方のポイントを詳しく解説します。
「貴様」は元々敬語だった
「貴様」という言葉は、本来 「あなた様」 という意味で使われる敬語でした。中世ごろから武家の書簡で使用され、相手への敬意を示す丁寧な表現として重宝されていたのです。
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武家社会では、親しい間柄でも敬意を示すために使われることが多かった
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詩歌や口語表現としても徐々に浸透
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男女問わず使われていた
この頃の「貴様」は、まさに敬語そのもので、現代のような侮蔑のニュアンスはありませんでした。
いつから意味が変わったのか?
「貴様」が敵対的・侮蔑的な意味で使われるようになったのは、江戸時代からです。
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武家以外の庶民に広がるにつれ、相手への尊敬の念が薄れる
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江戸時代中期以降は、相手を見下す・侮る際に使うニュアンスが強くなる
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明治時代の旧日本海軍では、親しい間柄では敬語として使われる例もあった
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その後はほぼ侮蔑語として定着
この変化により、現代では「貴様」と言えば、格下の相手や敵に対する強い言葉として認識されています。
「貴様」の語源と意味
「貴様」の語源には二説あります。
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「あなた様」から来た説
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「喜良喜随筆」にある「キミサマ」が由来という説
また、「貴」の文字自体に 敬意を表す意味 があるため、もともとは相手を尊ぶ言葉として成立していました。
現代の使い方と注意点
現代では、以下のような使い方が一般的です。
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友人や映画・漫画のキャラクターが敵に対して使う
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格下や敵対者に向ける罵倒の意味が強い
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ビジネスや日常会話での使用は厳禁
つまり、現代では「敬語」としての意味はほとんど残っていません。
「貴様」と似た敬語「貴殿」との違い
「貴殿」も元々は「貴様」と同様、目上や同格の相手に使われる敬語でした。しかし、現代ではビジネス文書や正式な挨拶で用いられる安全な敬語として残っています。
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「貴殿」は男女問わず使用可
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「貴様」は男性のみ使用、しかも侮蔑語として定着
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公文書や正式な場では「貴殿」を使うのが無難
まとめ
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「貴様」は元々、相手を敬う敬語として使われていた
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江戸時代以降、庶民に広まるにつれ侮蔑的な意味に変化
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明治時代の海軍では一部で敬語として使用されていた
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現代ではほぼ侮蔑語として認識されるため、日常では使用を避けるべき
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類似の敬語「貴殿」は安全に使える表現
言葉の意味は時代によって変わるもの。特に「貴様」は、歴史を知ることで時代劇や映画をより深く楽しむことができます。