子どもの「参加する権利」を日常に|意見を尊重するコミュニケーションのコツ


「どうしてダメなの?」「なんで勝手に決めるの?」 そんな言葉を子どもから言われて、ドキッとしたことはありませんか。忙しい毎日のなかで、ついつい大人の都合で物事を決めてしまい、子どもの気持ちを後回しにしてしまうことは誰にでもあります。

でも、子どもには「自分のこと」を自分で決め、自分の考えを伝える大切な権利があることをご存知でしょうか。これは、国際的にも認められている「子どもの参加する権利」という考え方です。

実は、この「参加する権利」を日常の家庭生活に取り入れることは、子どもの自信を育み、親子の信頼関係をぐっと深める鍵となります。今回は、特別な準備は一切不要。今日からすぐに実践できる、子どもの意見を尊重したコミュニケーションの具体的なコツを解説します。

1. なぜ「参加する権利」が子どもにとって重要なのか

「参加する権利」とは、子どもに影響を与えるすべてのことについて、子どもが自分の考えを自由に表明できる権利です。大人がすべてを決定し、子どもがそれに従うだけではなく、子どもを一人の人間として尊重し、意見を聞く姿勢を指します。

なぜこれが重要なのでしょうか。それは、自分の意見が大切にされるという体験が、子どもの自己肯定感を大きく育てるからです。「自分には自分の考えがあり、それを尊重してもらえる」という感覚は、子どもが自分らしく生きていくための揺るぎない土台となります。

また、幼い頃から自分の意見を伝え、対話する練習を重ねることは、将来、社会に出たときに自分の意思で困難を乗り越え、他者と協力して歩んでいくための「生きる力」そのものを磨くことにもつながります。

2. 意見を尊重するコミュニケーションの第一歩

「意見を尊重する」といっても、子どもの言いなりになることではありません。大切なのは、大人が決定権を独占せず、対話の過程に子どもを招き入れることです。

問いかけの質を変える

日々の何気ない会話で、クローズドクエスチョン(はい・いいえで終わる質問)ではなく、オープンクエスチョン(自由に答えられる質問)を意識してみましょう。

  • ×:「これにする?」

  • ○:「今日の夕食、何があったら嬉しい?」「週末はどんなことがしてみたい?」

このように問いかけるだけで、子どもは自分の頭で考え、言葉にする機会を得られます。最初からうまく答えられなくても構いません。大切なのは、「あなたの考えを聞きたい」という姿勢を示すことそのものです。

「聞く」ことに全力を注ぐ

子どもが意見を言い始めたら、遮らずに最後まで聞き切ることが重要です。忙しい時は「今はゆっくり聞けないから、あとで教えてね」と正直に伝え、約束した時間に改めて耳を傾けましょう。

意見を聞くときは、目を見てうなずき、「そう思ったんだね」「なるほど、面白い考えだね」と、まずは子どもの感情や考えをそのまま受け止めます。反対意見がある場合でも、先に共感することで、子どもは「否定された」と感じずに、建設的な対話を続けられます。

3. 日常生活で「参加する権利」を取り入れる具体例

家庭でのルール作りや日々の選択に、ぜひ子どもを巻き込んでみてください。

家族会議を短時間で定期的に開く

「家族会議」と聞くと仰々しく感じるかもしれませんが、要は「みんなで相談する時間」です。例えば、週末の予定、部屋の模様替え、次に読みたい本などを話し合います。

「今度の休み、みんなでどこに行こうか?」という相談の中で、行きたい場所をプレゼンしてもらうのも良い練習です。もし子どもの希望がすぐに叶えられなくても、「どうしてそれが難しいのか」を説明し、「じゃあ次はこうしよう」という代替案を一緒に探すプロセスが、合意形成の大切な学びになります。

ルールを一方的に押し付けない

門限やゲームの時間など、家庭のルールを決めるときも対話を取り入れます。「なぜそのルールが必要なのか」という目的を共有したうえで、子ども自身に「どうしたら守れるか」を考えてもらいます。

「宿題はいつやるのが自分にとってベストかな?」と相談することで、子どもはルールを「やらされるもの」から「自分が納得して選ぶもの」へと変えることができます。自分で決めたルールには責任が伴うため、自主的な行動も促されやすくなります。

4. 意見が食い違ったときの解決術

親子といえども、考えがぶつかることは当然あります。そんなときこそ、子どもの権利を尊重するチャンスです。

「両方の意見を混ぜる」という第三の選択肢

お互いの希望が衝突したとき、どちらかが我慢するのではなく、「両方のいいとこ取り」はできないか考えてみましょう。

例えば、インドア派の親とアウトドア派の子どもであれば、「午前中は公園で思い切り遊び、午後は家でゆっくり映画を見る」といったスケジュール調整です。どちらか一方が折れるのではなく、「どうすれば二人ともハッピーになれるか」を一緒に考える姿勢を見せることで、子どもは交渉術を身につけていきます。

感情ではなく「目的」に注目する

意見が食い違ったときは、表面上の要求ではなく、その背景にある「目的」を探ります。

「お菓子をもっと食べたい」と言う子どもに対し、「お菓子がほしい」という要求ではなく、「お腹が空いている」という目的に注目すれば、「じゃあお腹にたまる果物を食べようか」という提案が可能です。目的を共有することで、解決策の幅は驚くほど広がります。

5. 大人が「待つ」という姿勢の重要性

意見を尊重するコミュニケーションにおいて、もっとも難しく、もっとも大切なのが「待つこと」です。

子どもは、大人よりも自分の気持ちを言葉にするのに時間がかかります。うまく表現できなくても、言いよどんでいても、急かさずにじっくり待ってみてください。大人が先回りして言葉を補ったり、結論を急いだりしてしまうと、子どもは自分の考えを練り上げる機会を失ってしまいます。

沈黙は、子どもが自分自身と対話している時間です。その時間を大切にすることで、より深い、本質的な意見が出てくるようになります。

6. まとめ:完璧でなくていい、対話を積み重ねること

子どもの「参加する権利」を日常に活かすことは、決して難しいことではありません。今日のご飯を何にするか、どの服を着て出かけるか、そんな些細なことから、子どもの「選ぶ権利」を尊重してみてください。

完璧な親になる必要はありません。時には感情的になってしまう日があっても、後から「さっきは私の都合で決めてしまったね。本当はどうしたかった?」ともう一度対話の場を作れば大丈夫です。

大切なのは、大人が「あなたの一人の人間としての考えを、私は大切にしているよ」というメッセージを伝え続けることです。その積み重ねが、子どもにとって何よりも心強い糧となり、親子の間に揺るぎない絆を築いていくことでしょう。

明日からは、お子さんのちょっとした意見に、「あなたはどうしたい?」と問いかけることから始めてみませんか。その一言が、子どもの可能性を広げ、家庭をより温かい場所へと変えていくはずです。


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